

経験豊富なベテラン薬局長Nさん。
熱いハートと経験を活かした観察眼を武器に患者さんの同意を獲得しているようです。
早速インタビューしてみましょう。
Nさん、どうぞよろしくお願いいたします。
はい!まだまだ“かかりつけ薬剤師”としては未熟者ですが、よろしくお願いいたします!
最初に、“かかりつけ薬剤師指導料”の話を聞いたときは、どう思いましたか?
うーん、正直なところ、指導料にかかる“お金”のことを患者さんに説明しなくてはいけないのが、不安だなあ、と言うのが本音でしたね。今まで当たり前にやっていたことなので、その価値を改めて伝えないといけないじゃないですか。自信を持って説明できるかな、と不安になりましたね。
患者さんに指導料を伝えると、嫌がられるかな?というイメージですか?
そうですね。私は東北地方の勤務経験がありますが、患者さんは、優しいし、比較的時間に余裕があるのでこちらの話を聞いてくれました。東京の患者さんは待ち時間、処方箋の費用についてとてもシビアです。なので、お金の説明が一番の心配事でしたね。
なるほど、東京の患者さんをイメージすると難易度が高そうだったと。他のかかりつけ薬剤師さんの反応はどうでしたか?
薬局には複数名“かかりつけ薬剤師”が居るんですけど、タイプは別れましたね。
「制度なら、やらざるを得ないよね」、と淡々としている人。「新しいことなんて、やりたくない!」と文句を言っている人。薬局長の立場上、「まあわかるけど、がんばろう!」と常に励まし続けていました(笑)
当てはまりそうな患者さんの具体的な顔が浮かびましたか?
1日200~250人来る薬局なので、覚えている人というのは、せいぜい数十人くらいでした。薬剤師もたくさんいて、同じ患者さんを担当することは少ないので、具体的な顔は浮かびませんでしたね。

“かかりつけ薬剤師”制度のスタート直後はどうでしたか?
薬剤師を13年やっていますが、久しぶりに緊張しました(笑)。最初は声かけに躊躇してしまいましたね。
ベテランのNさんでも、やはり緊張したのですね。そこから、どのように改善して行きましたか?
すごくシンプルにいうと、慣れです。場数というか。例えば最初に話した “お金”に関しては、しっかり伝えることが大事。「私が担当していいですか?指導料は50円前後くらいかかります。」と、はっきり説明することが患者さんの安心感につながったように思います。回数をこなしていくうちに、患者さんの気になるポイントがわかるようになりました。
なるほど。そこから導き出した、同意獲得の「必勝パターン」みたいなものはありますか?
口頭で伝えるだけ、にならないように心がけました。かかりつけ薬剤師の価値を体験してもらうことが重要だと感じていますね。例えば疑義照会の時、2つの病院で重複薬があればチャンス。一元管理をしていくので「かかりつけ薬剤師になれば、私が常にチェックします。その結果、トータルのお薬の費用は安くなるんですよ」と、体験してもらった上で同意を促す。これはかなりの高い確率で同意がもらえますね。
では、薬剤師で同意を取れる人、取れない人。どんな違いがあると思いますか?
経験年数とモチベーションの2つが重要だと思います。やはり経験があると対応力があるので、うまく説明できますよね。モチベーションの重要性を感じたのは、同意書件数・服薬指導件数は具体的に数字が出ること。なので、数字好きな男性のやる気を誘う。もちろん同意書数を獲得することが医療人としての「目的」ではなく、その先の「医療貢献」に繋がっているという認識があるからこそ、同意書数が増えることに喜びを感じるんだと思います。そして、女性は数字を嫌がる(笑)。オトコ薬剤師は数字で結果が出るのが嬉しいので、頑張ってくれました。女性薬剤師は文句を言いながらも、そこまで意識せず、淡々とこなしているように思いますね。
同意が取れている患者さんの年齢・性別に特徴はありますか?
薬をたくさん飲んでいる方、複数の診療科に関わっている方、認知機能が落ちている方、この辺りの患者さんには意識的に声かけしました。私の場合は女性が多いです。6~7割くらいかな。高齢の60~70代の方が中心ですね。女性はゆっくり話をするので、同意の話も声かけしやすかったりしますね。おじいさんは寡黙でスキがない印象です(笑)。
確かに女性の患者さんの方が、「聞く」準備ができているように感じますね。かかりつけ薬剤師になって、初めて体験できたことはありますか?
月一回くらい来局する、おばあちゃんがいます。かかりつけ薬剤師になったことで薬以外の話も、冗談の話もするようになりました。足の悪い患者さんなので、待合スペースの椅子まで伺って話を聞くこともあるのですが、処方元の先生の悪口を大きな声で話された時は、周りの患者さんの目もあり、反応に困りました。カウンター越しではない距離感だからこそ、顔色とか声の大きさなどの違いなどに、自然と目がいくようになりましたね。
かかりつけ薬剤師にならないと得られなかった実感ですね。
そうですね。その体験から、在宅医療に関する興味も増えて勉強しています。何より患者さんの顔が想像できるので、リアルですよね。

これから“かかりつけ薬剤師”になる人に向けて、伝えたいことはありますか?
大きく変わったのは、自分の患者さん、という意識が芽生えたことです。患者さんから「家へ帰ったけど足が痛いから薬を取りに行けない」という電話が来ました。「近いし、持って行きますよ」とお伝えしてお届けすると、とても感謝されました。「これ食べなさいよ」なんてお菓子も、もらっちゃったり(笑)。単純に、感謝される質が少し変わりましたね。あとは相談されたことを調べる時の、責任感が今までとは違いますよね。薬剤師としてやれることは、まだまだあるな、と10年以上やっていて気づけたことが、とてもいい体験になっています。薬剤師、まだまだ伸び代がありますよ!
ベテランでも新鮮な気持ちになれているのが、素晴らしいですね。最後に、コミュニケーションが苦手と言われがちな“オトコ薬剤師”に何か、アドバイスがあればお願いします(笑)
機械的で受け身なままでは、成長はないと思います。患者さんとの会話でポッとでる質問の幅が、今までは“処方された薬”についてが主でしたが、生活の中身をイメージするような内容に変わります。パターンではこなせなくなる。会話の中で、一歩踏み込む勇気があると患者さんも自分の話をしてくれますね。
あと、“指導料”の話をすることへ不安を持つ人も多いと思います。自分も最初は不安になったけれど、自信を持って大丈夫だと思います。当たり前にやって来た服薬指導だって立派な技術だし、かかりつけで充実した指導やフォローの電話、残薬調整なんかができれば、トータルで安くなる。メリットが伝われば、患者さんからは、ちゃんと喜ばれますから。

13年目の薬局長でも、声をかけるのは最初は緊張するもの。だけど、次第と当たり前になってくると、新たな体験ができるようになった、また、薬剤師に自信を持って良い、と言ってくれるのが印象的でしたね。皆さんもチャレンジ!